太鼓と鉦(かね)の音が夜明け前から街中に響き渡る。
真夏の三重県桑名市で開かれる「石取祭」は、日本一やかましい祭りとして知られ、国の重要無形民俗文化財・ユネスコ無形文化遺産にも登録されています。2025年8月3日、初めて石取祭を訪れた僕は、昼と夜で移り変わる祭車の表情や、熱気あふれる人々の姿に圧倒されました。桑名の鼓動を間近で感じた、その1日を振り返ります。
桑名の街中に響く太鼓と鉦(かね)の音


調べによると祭りは、なんと夜中の2時から始まっていたそうです。お昼に到着してスグに、町のあちこちから太鼓と鉦の音が鳴り響いていて、桑名の空気自体が震えているように感じました。


桑名総社・春日神社(地元の方は親しみを込めて「春日さん」と呼ばれています)で儀式が行われ、夜までずっと音が鳴り響いています。街を歩いていても、遠くにいても、カンカンと響く音色は絶え間なく耳に届いてくる。祭りの後、次の日になっても、耳の奥に残っているような感覚があって、「ああ、これが桑名のDNAとして残っていくんだな」と思いました。
子どもの頃から石取祭を見て・参加して育った桑名市民は、きっと毎年、祭りの時期が近づくと頭の中に音色を流しながら、身体がウズウズしてしまっているのでしょう。
豪華な祭車と、人々の熱気


石取祭の見どころのひとつは、なんといっても43台もの祭車(さいしゃ)。全国でも、単一の神社にこれだけの数が集まる祭りは珍しいそうです。
昼間は陽の光のもと、力強く太鼓を叩く人たちの姿と、華やかな祭車の装飾が際立ちます。魚町の祭車では魚の木彫りの装飾があって、その精巧さに思わず見入ってしまいました。


夕方から夜にかけては、祭車に灯る提灯やろうそくの火が幻想的な雰囲気をつくり出します。揺れる明かりに照らされる木彫りの細工や人々の笑顔は、昼間とはまた違った趣がありました。まるで時間がゆっくり流れているかのようで、気づけば何度も足を止めてしまいました。
桑名のまち歩きも一緒に楽しむ


祭りを見ながら歩いていると、昔ながらの商店街や寺町通り、旧東海道沿いの建物など、歴史を感じさせる街並みが目に入りました。
仕事やプライベートで何度かほとんど車で訪れていた桑名ですが、こうして石取祭の日に歩いてみると、町の表情がぐっと違って見えました。お店の軒先に並ぶ提灯や、通りを埋め尽くす人々の笑い声。ふだん見慣れない景色なのに、どこか懐かしさを感じました。
桑名の暑さと石取祭の熱さを体感できた1日に


桑名の夏は、とにかく暑かった!しかし、その一方で暑さと太鼓や鉦の音に包まれたことで、「これが桑名の夏か」という実感が増しました。無理はしないで欲しいものの、これこそが、桑名の石取祭の醍醐味なのかもしれません。
石取祭は、誰かと一緒に訪れても、一人でふらりと訪れても、その場にいるだけで夏のエネルギーを分けてもらえる祭りでした。友人のご厚意で初参戦させていただきましたが、足を運べて良かったです。太鼓と鉦の音に包まれた時間を過ごせば、石取祭を観に来た誰もがとても印象深い夏の記憶が刻まれるはずです。
石取祭を体験したことない方は、ぜひ今からスケジュールを押さえて桑名に足を運んでみてください。
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