名古屋港に到着して目についたのは、ひときわ目を引くオレンジ色の船体。それが、南極観測船「ふじ」でした。
2025年末の名古屋観光にて、名古屋港水族館が目的のひとつ。せっかくなら周辺の施設も回ろうと思い、4施設共通チケットで「名古屋港水族館」「名古屋港ポートビル(展望台)」「名古屋海洋博物館」「南極観測船ふじ」を巡る流れにしました。
水族館のついで、くらいの気持ちだったのに。結果から言うと、「南極観測船 ふじ」は、ついで扱いにしない方がいいスポットでした。
まず圧倒される、100mの船体と「厚み」の理由


「ふじ」は全長約100m。資料によると、1965年(昭和40年)から18年間活躍した2代目の南極観測船だそうです。目の前に立つと、船というより施設に近い存在感があります。


見学して印象的だったのは、船のつくりがとても丁寧に説明されていること。特に「南極へ行く船」と聞いて納得したのが、氷を割って進むための船体構造です。
場所によって鉄板の厚みが変えられていて、「ここはぶつかる前提なんだな」と思わせる迫力がありました。普段、港に停泊している船を眺めるだけではまず意識しない「厚みの設計」が理解できる。これだけでも、見学する価値は十分にあります。
食堂、居住区、操舵室…船の中に「生活」が残っていた


船内に入ると、最初に現れるのは食堂のような空間。「ここで皆がご飯を食べていたのか」と思うだけで、船は「働く場所」であり「暮らす場所」でもあったことが伝わってきます。






さらに進むと、居住スペースや設備が続き、当時を再現したマネキン展示もありました。そこでふと感じたのは、乗組員の生活が想像以上に窮屈だということ。


寝床のスペースは、カプセルホテルよりも窮屈に感じるほどでした。「疲れていたらどこでも眠れる」とは言うけれど、当時の肉体労働や緊張感を思うと、簡単な一言では片づけられません。自分だったら今すぐ眠れるだろうか…たぶん難しい。でも、寝るしかない。過酷です。


そしてブリッジ(操舵室)も見学できます。船を動かす場所に立つと、海と氷の世界へ向かった旅路が、少し現実味を帯びてくるんです。
地球17周分の航海と、名古屋で残った理由


展示の中で知った数字が、総航行距離 68,000km(地球約17周分)。数字だけ見るとピンとこないのに、実物の船内を歩いたあとだと重みがまったく違います。「この船が、その距離を積み重ねてきたんだ」と素直に思える。


引退後、「ふじ」をどこが引き受けるかで各地の港が手を挙げた、という話も印象に残りました。最終的に名古屋(愛知)が譲り受けたことで、今こうして「名古屋港で船内に入れる展示」になっています。旅の途中で偶然出会える場所に、これだけの歴史が丸ごと置かれているのは、ありがたいことだなと思います。
水族館の南極展示と、「南極観測船 ふじ」はつながっている


名古屋港水族館は北館と南館に分かれていて、南館側には「日本から南極へ向かう旅の経路」をテーマに、生き物や資料が展示されています。どちらが先かは分からないけれど、「南極観測船 ふじ」が名古屋港にあるからこそ、水族館側の展示もより立体的に感じられると思いました。


水族館だけでも十分満足できる場所ですが、ふじを見てから南館に行くと、「南極」という言葉が急に身近になります。だからこそ、名古屋港水族館へ行く方には、声を大にして言いたいです。
南極観測船ふじは、セットで見てほしい。そのほうが、旅の体験が一段深くなります。
タロとジロの像の前で、少しだけ立ち止まった


「南極観測船 ふじ」の目の前の公園には、タロとジロの像があります。南極に連れて行かれた樺太犬(そり犬)で、事故やトラブルによって現地に置き去りにせざるを得ませんでした。そして1年後、再び南極を訪れたときに、タロとジロが生きていた――そんな物語が語り継がれています。


生き延びたことは奇跡だし、アザラシの糞などを食べていたのでは、とも言われています。ただそれ以上に、置いていく決断をしなければならなかった人たちの気持ちと、タロ・ジロ・サブローを含む樺太犬たちのことを考えると、胸が少し痛くなりました。
像の前は、派手な展示ではありません。でも、船内を見たあとだと、自然に立ち止まってしまう場所でした。
名古屋港で水族館を存分に楽しむなら、南極観測船 ふじは外せない


南極観測船ふじは、とても見応えがあります。構造の工夫も、生活のリアルも、数字の重みも、タロとジロの物語も。どれも「現場の温度」を感じさせてくれました。
名古屋港水族館を目的に名古屋港に訪れる人は多いと思います。でも、もし時間が許すなら、ぜひ「南極観測船 ふじ」まで足を伸ばしてみてください。水族館の体験が、より深い旅へと昇華します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 施設名 | 南極観測船ふじ |
| 所在地 | 〒455-0033 愛知県名古屋市港区港町1−9 名古屋港ガーデンふ頭 |
| 船の特徴 | 全長100mのオレンジ色の南極観測船。1965年(昭和40年)から18年間活躍した2代目の南極観測船で、本格的な砕氷艦としては日本で最初の船。 |
| 営業時間 | 9:30〜17:00(入館は閉館30分前まで) |
| 休館日 | 毎週月曜日(祝日の場合は翌日休館) GW・7〜9月・年末年始・春休みは無休 |



