

最近、あらためて「まちづくりって何だろう?」と考える機会が増えています。そんな中、参加させていただいたのが、鳥羽駅前の未来を描くアイデアコンペ「私たちがまちを編み出す。」の最終審査会でした。
会場には、全国から集まったU35の若者たちが、鳥羽というまちをじっくり歩き、耳を澄まし、目に映る風景と人の営みから生まれた「想い」を、それぞれのアイデアに込めて発表してくれていました。
前回の中間プログラム「鳥羽駅アイデア構想会議」の記事はこちらから
鳥羽駅周辺を訪れた人は、「海が遠い」と感じている
多くの提案に共通していたのは、「鳥羽なのに、海が遠く感じる」という気づきです。確かに鳥羽駅に降り立った瞬間に、海の街らしさを存分に感じられるかといえば…正直、自信を持ってYESと答えられません。
昔の鳥羽はもっと海と近く、高度経済成長期に埋め立てで整備が進む中で、街と海の距離は物理的にも心理的にも少しずつ離れていったのかもしれません。それでも、若者たちは「じゃあどうしたら、もう一度海を感じられるようになるだろう?」と本気で提案を練っていました。
前回と比べて、今回は印象がガラリ!さらにアイデアが練りに練られていた
前回、風をテーマにした建築提案に関しては、どこか万博のパビリオンのようにも見えて、ちょっとどうなんだろうなという印象を受けていました。しかし、今回は建築物につながる導線の話や、「鳥羽の風を上から感じた。風が渦を巻いているようだった」というインスピレーションを制作者二人がスケッチでやり取りをしてアイデアが形になっていったという話に、とても惹かれました。建物はただの形ではなく、自然と人との関係性を表現した装置のようで、「なるほど、そんなふうに鳥羽らしさを表現するんだ」と深く頷きました。
また、マリンターミナルや鳥羽一番街、マルシェといった「点」が、橋や回遊できるテラスで「線」としてつながり面として機能する構想は、多くの案に共通していました。「鳥羽駅前が、一体感ある空間に生まれ変わるかもしれない」。そんな未来を思い描いた参加者は多かったはずです。
「まちづくり」ではなく、「まち守り」という視点
今回の審査会では、「まちづくり」だけでなく、「まち守り」という言葉が、ソトコトの指出さんから飛び出しました。
様々な地域でお話を伺う中で、なにかを「つくる」余裕すらないという言葉を受け取っている指出さん。今あるものをどう守って繋いでいくか、まちを「つくる」ことより前に縮小していく現代社会では「守る」ことが、まず重要な視点になります。
建築だけでなく、資源の再活用や人の営みまで含めて考えられたプランには、未来の鳥羽に対する温かな眼差しを感じました。特に、牡蠣殻を循環させるという案や、島の生業(なりわい)を体験できる小屋が連なる構想、老若男女に優しいモビリティ構想など、提案されたどのプランにおいても観光客だけでなく、暮らす人の未来を大切にしている印象を受けました。
想いを聞いて、伝えるということ
発表を聞きながら、何度も「すごいなぁ」と参加した友人と感心していました。発表者、審査員、運営チームそれぞれが三者三様の想いを言葉にしている姿からは、ヒトや地域のことを思う気持ちが常に潜在しているように感じられました。そんなやりとりを聴く一方で、「自分たちは何ができるだろう?」という問いも浮かびます。僕自身は建築の専門家や運営スタッフでもないけれど、1参加者として「伝えること」ならできるかもしれません。
今回のアイデアコンペで交わされた想いや提案が、参加した人だけのものではなく、地域に関わる多くの人たちに届いて、何かしらの「はじまり」になってくれたら良いな。そんな気持ちで、本記事を綴っています。
一人ひとりの一歩が「まちを編む」


まちを編み出す。
とても丁寧な言葉だと思います。よそもの、わかもの、ばかもの、そして地域で暮らす人々。誰か一人が形を決めるのではなく、いろんな糸が重なり合い、少しずつ模様になっていくような感覚を参加者は皆、共有できました。
今回、若者たちが紡いだアイデアが、これからの鳥羽の風景を彩る一部になりますように。そして、この記事を最後まで読んでくださったあなたにも、『なにかできるかもしれない』と感じていただけたら嬉しいです。今回の「鳥羽駅前の未来を描くアイデアコンペ」を、未来へと紡いでいけたらと思います。
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