仕掛ける側/のめり込む側|イン・ザ・メガチャーチが描くファンダムのリアル【読感】

読後に残ったのは「爽快感」ではなく、じわじわくる重さでした。

朝井リョウさんの『イン・ザ・メガチャーチ』を読み終えて、まず浮かんだのは「とても面白かった」という感想でした。けれど、それはスカッとした爽快さではありません。むしろ、読めば読むほど深いところへ引っ張られていくような感覚。読み終えてからも、しばらく頭の中で反芻してしまうタイプの面白さでした。

本作は、現代の空気をそのまま切り取るというより、「現代の心が動く仕組み」を、登場人物たちの視点を通してじっくり見せてくる作品だと感じます。

ネタバレは避けたいので細部には触れませんが、個人的に印象的だったのは、三人の視点が時間軸の中で並走し、終盤で一本の線に収束していく構成でした。読者は出来事の輪郭を少しずつ手に入れながら、「これはどこにつながるのか」と無意識に追いかけてしまいます。

目次

1. 三人の視点がつくる距離感がリアルだった

物語には、立場も世代も異なる三人がメインとして登場します。それぞれの視点があるからこそ、同じ現象を見ていても心の動きがまったく違う。

  • 仕掛ける側として現場に入っていく人
  • 心の繊細さを抱えながら日々を過ごす人
  • 応援する側として、ある出来事をきっかけに渦へ巻き込まれていく人

この「距離の違い」が、とても現代的でした。誰かの熱狂を外側から眺めているつもりでも、条件が揃えば自分も当事者になる。あるいは、当事者だった人が、いつの間にか外側に立っている。

本作は、その移動をドラマとして大きく語るというより、気づけば立ち位置が変わっていたという形で描いてくる印象があります。だからこそ怖いし、リアルなんですよね。

2. 「メガチャーチ」という言葉が刺すもの

タイトルのメガチャーチは、直訳すれば「巨大な教会」。ただ、ここでいう教会は宗教施設そのものというより、信仰の構造を指しているように感じました。

誰かを信じる。推す。応援する。その気持ちは本来、個人的で、静かで、尊いものでもあるはずです。でも、規模が大きくなり、仕組みが整い、数字がついてくると、そこには別の力学が生まれていく。

数字の象徴として描かれるのが、たとえば「枚数」というわかりやすい指標でした。今は音楽を聴く手段がいくらでもある中で、CDが再生のためではなく、別の価値のために積み上がっていきます。そこに「勝ち/負け」や「比較」が入り込む。

歪に感じるCDの枚数売上のような構造は、アイドルや音楽に限らない気がします。数字、ランキング、盛り上がり、話題性。熱量が測定される瞬間から、気持ちはいつの間にか別のものへ変換されていってしまう。そんな怖さがありました。

3. 仕掛ける側/のめり込む側の両方が見えるから、逃げられない

僕が特に引き込まれたのは、「仕掛ける側の視点」も丁寧に描かれているところです。ファンの熱量を求めるのは、単に誰かが悪いからではない。産業として成立させるための論理がある。競争がある。比較がある。プレッシャーがある。

そして何より、仕掛ける側もまた人間として揺れている。仕事として合理的に考えなければいけない場面と、感情として割り切れない瞬間が交互にやってきます。

一方で、応援する側もまた、単純な操られる存在ではありません。好きだから応援する。仲間と楽しむ。支えたい。そこには確かな肯定感も、救いもある。だからこそ、簡単に「引っかかった」とも言えない。

両極端な側面を同時に見せられることで、読者は居場所がなくなっていきます。誰かを断罪して終われない。自分は関係ないとも言い切れない感覚が、読み心地をじわじわ重くしていくのだと思います。

【まとめ】イン・ザ・メガチャーチは現代を覗くというより、鏡を見せられる本

『イン・ザ・メガチャーチ』は、読み終えたときに気持ちよく着地するタイプの物語ではありません。むしろ、深淵へ引きずり込まれるように読み進め、最後に「つながってしまった」という感覚が残る作品です。

作品として、それが面白い。現代のファンダムや推し活の話でありながら、本質は「人の心を動かす物語」の話でもある。心が動くことは人生を救うこともある。けれど同時に、別の形で消耗させることもあるのだと突きつけられます。

だからこそ、この本は他人事という一言では終わりません。読者それぞれが、自分の中の「信じたいもの」「支えたいもの」「数字に揺れる瞬間」を思い出してしまう。そんな鏡に目を向けているような一冊でした。

気になる方は、ぜひ手に取って読んでみてください。読み終えたあと、しばらく静かに考えたくなるタイプの読書体験が待っています。

イン・ザ・メガチャーチ 単行本 – 2025/9/3 朝井リョウ (著)

本記事は、取材や体験に基づいた一次情報をもとに、AIツールを活用して構成案を作成し、筆者が内容を編集・レイアウト調整しています。最終的には人の目で確認のうえで公開しています。

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