志摩市・鵜方駅に併設された近鉄不動産が運営する「伊勢志摩ぷらっとHOME」にて志摩まつり2025が開催され、志摩のみらいの共創会議(伊勢志摩冷凍)の石川隆将さんによる講演を聴いてきました。テーマは「志摩の海とともに生きる、ワクワクする漁業の未来」です。


全体を通して感じたのは、「ここ数年で、ますます伊勢志摩がとても熱い」ということです。
うみらぼを始めとした新たな風や志摩地中海村や賢島クルーズ等を運営するIXホールディングス、伊勢志摩の要 近鉄ホールディングスの動き、そして石川さんを始めとした水産業者の挑戦!それらが重なり合い、志摩市というフィールドで新しい取り組みが一気に動き始めています。伊勢志摩の未来を切り開く渦の勢いを講演を通して感じました。
以下、当日のレポートをメモとして残しておきます。
当日の施設内の様子








海が抱える現実と変化
講演の中では、まず伊勢志摩の海の現状について触れられました。
志摩市だけでなく、伊勢志摩、さらには太平洋側の海全体で広がっている藻場の減少、水温の上昇、生態系の変化です。
結果として、
- 伊勢海老やアワビといった名産品の漁獲量減少
- 南方系の魚(アイゴ、シロサバフグ、オオニベなど)の増加
- とれる魚種の変化
といった現象が起きています。
特にアワビは壊滅的で、かつて50トンあった漁獲量が6トン(88%減少)ほどになっているそうです。サザエは74%減少。伊勢海老も捕食されるケースが増え、ウツボが丸呑みしていたというお話も。
黒潮大蛇行が終息したこともあり、海水温は多少落ち着いたものの、すでに海藻類の減少は深刻で、すぐに元どおりになるわけではありません。
ただ石川さんは、
「それでも、回復の兆しはある。」
と語りました。
海の課題から生まれる新事業の数々
石川さんの取り組みは、とにかく幅広いです。
- 水産加工
- 食品加工(T&T)
- 飲食店&キッチンカー
- フリップファーム(海面牡蠣養殖)
- おかげ横丁での販売店
生産から加工、流通、販売まで一貫して手がけています。その根底には常に、「海の課題を解決する」という視点があります。
未来型干物「熟成干物」の開発
東京オリンピック前後で衛生管理が厳格化され、HACCPの推進が進み、干物屋(漬物屋も)が減ってしまいました。干物に込められた「魚を無駄にしない、海辺の知恵を未来に残したい」という想い。プロトン凍結といった日本の技術を使った熟成干物を開発したという話が印象的でした。
細胞を壊さずに凍結して鮮度と旨味を保つ技術。衛生を徹底して、腐敗や酸化をどう止めるか。未来型干物は、そんな答えのひとつとして生まれています。
海面養殖と酸欠の課題
近年、広島などで牡蠣が大量死した原因のひとつとして「酸欠」が疑われているそうです。
石川さんは、
- 海の溶存酸素量(DO)
- プランクトン量
をセンサーで読み取り、スマホで確認できる仕組みで日々、管理されています。また、4年かけて海のデータを蓄積し、「10日後に赤潮が出る」などの未来予測を可能にする仕組みの確立を目指しています。
志摩市浜島町にあるフリップファームでは海面での牡蠣養殖を採用。従来のロープで牡蠣を吊り下げる垂下式養殖とは異なり、酸素量の多い水面で育てることで、酸欠によるダメージを減らす工夫をしています。
目指すのは、場所を選ばない牡蠣の陸上養殖
印象深かったのが、
「サハラ砂漠でも牡蠣を育てられるようにしたい。」
という言葉でした。
陸上養殖を本格的に進めるため、微細藻類培養のバイオリアクターを自作し、24時間稼働で研究を進めているとのこと。既に8割ほど完成し、実験段階に入っているそうです。
次はアコヤ貝か、牡蠣か、アワビか。それはまだ見えてはいないものの、大前提となるのは藻類の回復と繁栄です。海の課題を正面から受け止めながら、新しい技術で未来の水産業をつくろうとする姿に、強いエネルギーを感じました。
変化を前向きに捉えられるチームが志摩に集まっている
石川さんや、志摩のみらいの共創会議に関わる企業・事業者の皆さんは、海の変化を悲観するのではなく、「どう適応していくか」「どう前向きに踏み出すか」というスタンスで取り組んでいるように感じました。
そこにはきっと表面では見えない苦労もあるはずです。それでも挑戦し続ける姿を、地域の一員として本当に尊敬します。
私自身、今回の講演を聞きながら、
「志摩の海は変わり続ける。だけど、その変化とともに歩む人もまた進化している。」
そんな風に感じました。これからも、志摩の海を舞台にしたマリンテックの動きや水産業の進化に注目していきたいです。そして、伊勢志摩地域がどんな未来を描いていくのか、心から楽しみにしています。
伊勢志摩ぷらっとHOMEの紹介
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 住所 | 三重県志摩市阿児町鵜方(近鉄 鵜方駅構内) |
| 公式Web | https://www.kintetsu-re.co.jp/sumapla/iseshima/ |
| 運営会社 | 近鉄不動産株式会社 |
| 施設内容 | ・地域情報コーナー ・無料休憩スペース ・ワークショップ/セミナースペース(レンタル可) ・コワーキングカフェ風のくつろぎスペース |
| 備考 | ・駅直結で利用しやすい「よりみち」空間 ・地域住民・観光客が共に使えるコミュニティスペース ・イベントや講座が随時開催される地域の交流拠点 |



